ブルガリホテル日本上陸
魅せるホテル、誇れるホテルをつくる
ブルガリホテル東京 総支配人 田中雄司氏
取材・リクラボ 久保 亮吾 撮影・大崎 聡
ザ・リッツ・カールトン、セントレジス、ラグジュアリーコレクション、JWマリオット、Wホテル、エディション・ホテル。これらのマリオットインターナショナルのラグジュアリーカテゴリーは次々と日本に上陸してきた。そして、いよいよ満を持してブルガリホテルが東京駅の目の前に誕生する。ブルガリホテル東京の概要と求める人財について田中雄司総支配人に聞いた。
ブルガリスイートは400㎡、イタリアンコンテポラリーデザイン
いよいよブルガリホテルが日本に上陸するんだ!というワクワク感があります。まずは基本的なことなのですが、ブルガリホテルズ&リゾーツとはどんなホテルグループなのか、そこからお聞きしてもよろしいでしょうか。
ブルガリというブランドの名前は皆さんご存知のブランドだと思いますが、われわれには5つのビジネスの柱があります。つまり「宝飾品」「時計」「フレグランス」「アクセサリー」そして「ホテル」ということになります。
ブルガリホテルブランドの一番最初のホテルは2004年で、ミラノに開業しました。その後に、私自身も3年弱勤務したブルガリリゾートバリが2006年に開業。 そしてロンドン、ドバイ、 北京、上海と開業し、2021年は7軒目のホテルがフランスのパリに開業しました。私たちのブルガリホテル東京は8軒目になる予定です。
それ以降に開業を予定している場所は、同じく2023年予定のイタリアのローマ、そしてアメリカのマイアミビーチ、モルディブ、アメリカのロサンゼルスと続く予定です。
ブルガリホテル東京はどんなホテルになるのか教えてください。
東京駅の目の前という素晴らしい立地に建つ「東京ミッドタウン八重洲」の最上階である40階から45階の6フロアに入居します。メインロビーは40階で、そのフロアにイタリアンレストラン、ラウンジ、寿司バー、チョコレートショップ、宴会場、スパ(フィットネスとプールも含む)も設置されます。
プールは25メートルでトリートメントルームが8つですから、スパとしては比較的広いスペースとなります。こちらはメンバーシップも募集する予定でおります。
私たちのホテルは98室というブティックホテルのサイズです。イタリア人デザイナーのアントニオ・チテリオ/パトリシア・ヴィール (ACPV)のデザインで、ブルガリブランドらしいホテルになると思います。最初に開業したミラノからずっと同じデザイナーを起用することにもこだわっていて、世界のブルガリホテルのデザインは統一感のあるものになっています。ラウンジ、レストランなどのパブリックエリアや客室にもイタリアの家具が使用されていて、コンテンポラリーなイタリアンデザインを感じていただけるようなホテルです。
外に出られるテラススペースが象徴的ですね。
はい。それが大きな特徴になろうかと思います。40階にはビルの東西両側にテラスがありますのでレストランや宴会場からオープンエアの部分にお客様が出ることができます。
また、45階のテラス部分にはガーデンを設けていて、こちらはシトラスのガーデンでレモンの木があったりするのですが、高層階のホテルでありながらも縁を感じることができるような設計になっています。
そして、大きな特徴という話に追加するならば、44階にあるブルガリスイートは1ベットルームで400㎡の広さになります。おそらく東京で1番大きなスイートになるのではないでしょうか。その他の客室も50㎡以上が基本スペックとなっています。
働く人が誇りを持てるホテルを。他ホテルにも羽ばたける人財を
ブルガリホテル東京が求める人財とは、どんなイメージでしょうか。
月並みな言い方かもしれませんが、とにかくまずは、やる気がある人。そして、常にポジティブでいられる人。それから人を思いやる心を持った人を探しています。
ブルガリホテル東京で働く人は人種、性別、価値観も実にさまざまな人が集まってくることになると思います。ですから、自分と違う価値観も認めて柔軟に対応でき、相手をリスペクトできる人に仲間入りしてほしいです。
そういう方々と一緒に皆が自分の働く職場のことを誇りに思える、そんなホテルをつくっていきたいと考えています。
われわれはマリオットインターナショナルのグループですので、グループが持つ他のラグジュアリーホテルに羽ばたけるような機会も積極的につくっていきたい。それに適う人をブルガリホテル東京で育てていかなければならないとも思っています。
ブルガリホテルの運営は、ブルガリホテルズ&リゾーツという会社とマリオットインターナショナルの2社が管轄をしていることになるのですが、この両者の関係はどんなものなのでしょう。
少し特殊ですよね。ブルガリは世界的ブランド企業であるわけですが、ホテルの運営ノウハウはもともと持っていなかった。そこで頼ったのがリッツ・カールトンだったわけです。ですからブルガリホテルの運営にはリッツ・カールトンのノウハウが多く詰まっているのです。
ただし、いわゆる“魅せる部分”とでも言いましょうか。ブルガリの信じる美的感のようなものはしっかりとホテルの中にも体現していき、その世界観を成立させていくことが求められます。
私自身の仕事としてもブルガリに確認しながら進めていくことと、マリオットの考え方で進めていくことと、2つがあるわけですね。
田中総支配人は開業5軒目ですね。集大成と言ってもいいのでは?
実は、私はザ・リッツ・カールトン京都が自分の最後の開業と考えていたんですよ。まさかもう1度開業をやるとは思っていませんでした(笑)。
ところが、2019年にブルガリホテル東京のモックアップルームが完成しまして、それをチェックしに行くという機会があったのです。その部屋を見て、「ああ、これは自分でやりたいな!」と思ったのです。それで、その気持ちをブルガリ側とマリオット側に伝えましたら、運良くOKがもらえたのです。あの、モックアップルームを見たときに感じた熱い気持ちをしっかり育てていきたいな、というのが今の私の想いです。
開業メンバーというのは強い絆で結ばれるものですから、全員が誇りに思えるようなホテルにしなければなりませんね。
私が以前から思うことは、田中雄司さんというホテリエは、ホテルで働く日本人の若手にとって実に良いロールモデルになるキャリアを積まれている方だなと感じています。ぜひ、この機会に積まれてきたキャリアや信条のようなものを読者にも共有してほしいのですが。
私がホテルのことを勉強しようと思ったのは、実はアメリカに留学してからなんですよ。何を選考するか大学2年生の時に迷っていて、正直言えば消去法で浮かび上がったのが「ホテルマネジメント」でした(笑)。
卒業後は運よくアメリカで就職することになり、 バージニア、ワシントンD.C.、シカゴ、ハワイ、カリフォルニア、フロリダと動きながら8軒のホテルで働く機会に恵まれました。
当時働いていた会社がホテルを東京で開業するという事で日本に帰国し、そこから日本でのキャリアがスタートします。
2012年にザ・リッツ・カールトン東京で働くことになり、その後はザ・リッツ・カールトン京都のホテルの開業に総支配人として携わりました。京都の滞在が3年と少し過ぎたところで、インドネシアのブルガリ リゾート バリで働くことになり、ここで初めてブルガリブランドのホテルで働いたわけですね。
18年秋に再びザ・リッツ・カールトン東京に戻り、2022年の4月からブルガリホテル東京に着任しました。
いくつかのラグジュアリーホテルブランドで働く機会を得て、いい経験になっています。 また、アメリカで若いうちに仕事と生活を出来たことが、今になっ て考えると私の一番の財産です。
ホテル業界の有名な経営者の言葉で「自分が接してほしいと思うように、相手にも接してあげなさい」というものがあります。私は若いころにこの言葉に出合って、以来それを心がけています。この気持ちは今度のホテルにも植えつけていきたいものです。
(取材・2022年8月)