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オリックスが作る高級旅館「箱根・強羅 佳ら久」とは 箱根・強羅 佳ら久 総支配人 藤井育郎氏

取材・リクラボ 久保 亮吾  撮影・大崎 聡

オリックス不動産株式会社は、オリックスグループの18の宿泊施設を運営する運営会社8社をブルーウェーブ株式会社に統合し、4月1日付で新社名をオリックス・ホテルマネジメント株式会社とした。新スタートを切ったオリックス・ホテルマネジメントが2020年秋に箱根の強羅に開業するのが「箱根・強羅 佳ら久(はこね・ごうら からく)」である。この新施設ついて、そのコンセプトと求める人材像を藤井育郎総支配人に聞いた。

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今日は「箱根・強羅 佳ら久」についてお聞きしに来たのですが、その前に新会社のオリックス・ホテルマネジメント設立の経緯や目的を教えていただけないでしょうか。
オリックスが宿泊施設をやっていることは一般の方はあまりご存知ないかもしれませんね。昨年から川栄李奈さんを起用したテレビコマーシャルが流れましたので、それで知っていただいた方も多かったかもしれません。
クロス・ウェーブ、クロスホテル、ホテル ユニバーサル ポート、ホテル ミクラス、ホテル万惣、・宇奈月温泉 やまのは、などオリックスグループはこれまでに多くのブランドで宿泊業を展開してきました。宿泊業に関する運営会社は8社に渡っていたのですが、これらを1本化してオリックス・ホテルマネジメント(以下、OHM)としました。統合により、サービス・専門性の向上、ガバナンス体制の構築、人材獲得・育成強化および業務集約・標準化などを実現し事業拡大を目指します。

最大のメリットは、やはり人材に関してだと思います。OHM籍では約1600人のスタッフがいることとなり、グループメリットを生かして彼らを育てることができると思っています。優秀な人材が全国の施設でキャリアを積めるということです。
私たちは2年前から「モラルサーベイ」とい社内調査を実施していまして、そのサーベイの中で各スタッフの希望を積極的に聞く仕組みができています。もちろん、すべてが叶うわけではありませんが、人事異動以外にも別の宿泊施設に3カ月間だけ仕事をしに行くクロストレーニングなども、このサーベイで取った希望をもとに展開しています。
藤井さんは板前さん出身という経歴ですね。
もともとは京都のお寿司屋さんからキャリアをスタートしています。そのあとに料亭で修行していたのですが、神戸のオリエンタルホテルの知人から「今後、新浦安にもオリエンタルホテルができるんだ」という話で誘っていただいて、新浦安オリエンタルホテルの和食調理に入りました。37歳の時に転機があって、「ホテルの表のほうも見てみないか」という打診があり、そこから宿泊部門や婚礼部門で仕事をしました。
その時はADR(平均客室単価)もRevPAR(販売可能1室単価)もわからずに宿泊部長になってしまったので、随分と勉強しました。勉強が嫌いで板前さんになったんですけどね(笑)。まわりの課長たちもかなりフォローしてくれたので感謝しています。
専門的なことが分からないなりに私が心がけていたことは、いつも自分がいったんすべての問題について受け皿になって拾いきって、それから各専門家と相談して決めていったということ。丸投げせず、総支配人からの要望も、部下からの要望も自分が受け止める。そうすると、だんだんと部下との信頼が厚くなっていったように思います。この経験は今に生きていますね。

今、心がけていることは、とにかく全部署を日々まわるということ。スタッフの目をいつも見てまわっています。毎日見ていれば「あれ?今日はちょっと調子悪いかな・・・」とか、分かるようになってきますね。3日連続で調子悪そうな目をしていたら、声をかけますよ。
もちろん調理場も入っていきます。もともと調理人なわけですし、うるさいことを言うわけではなくて、調理を知っているからこそ考えられることがあるんです。調理場の中の問題も、何をどう調整すればいいかを具体的に相談できますし、それが私の強みでもありますから。
2017年に「箱根・芦ノ湖 はなをり」で開業総支配人に着任されました。
「はなをり」は会社にとっても私にとっても新しい挑戦だったので、非常におもしろかったですね。オリックスとしては2002年に「別府 杉乃井ホテル」を取得したことが旅館運営のスタートです。そこから8施設の旅館運営に携わってきて、「はなをり」はその集大成として、オリックスが新築で初めて作る温泉旅館だったわけです。
私はシティホテルで経験を積んできたので旅館のように1泊2食がパッケージになっているという商品は初めてでした。ですから運営についてもかなり勉強をしました。リゾートというのはシティと比べてお客さまが施設でお過ごしになる時間が長いんですね。それによって「間(あいだ)」の時間が生まれる。つまり、チェックインと夕食の間、夕食から寝るまでの間、起きてから朝食までの間、そしてチェックアウトまでの時間です。こうした「間」の時間をいかに楽しませるか、あるいはリラックスしてもらうかということを真剣に考えなければなりません。「はなをり」の総支配人になってから、それを必死で考えてきました。そして、そのことは「佳ら久」のサービス設計にも生きています。
その「佳ら久」について詳しく教えてください。「はなをり」との住み分けは?
「はなをり」は客室数が154と比較的多いということもあって顧客ターゲットを広めにしてあります。若いカップル、女子会、ファミリー、団塊世代のご夫婦などの皆様が箱根を楽しんでいただける施設です。 その「はなをり」と比較すると「佳ら久」は2段階くらい上の上質な旅館といえるでしょう。強羅という場所が、箱根の中でもトップクラスのエリアですから、そのエリアに恥じないクオリティを提供し、70室という規模で運営していきます。
「佳ら久」の名前の由来は、自然・歴史・文化が豊かな箱根・強羅で、「めでたいこと、佳きことが、久しく続くように」という思いを込めて名付けました。シンボルマークは、長寿の象徴として縁起が良いとされる亀をモチーフにした日本の伝統的な文様「亀甲紋(きっこうもん)」をアレンジしています。 露天風呂テラスを合わせると全室が50㎡以上の空間です。また、大浴場と部屋風呂の温泉の泉質を変えるなど、こだわっています。
天気のいい日には相模湾が一望できるという立地で、これは強羅でも最良の場所だと感じています。
では、「佳ら久」が求める人材は。
自分自身が「佳ら久」だと思える方に来ていただきたいですね。つまり、そこで働く自分がブランドの一部なんだと思える人という意味です。
よく「立ち上げを経験したい」という志望動機を聞くのですが、それも大事ですが、そこでストップしてほしくないと私は考えています。立ち上げというのは一時のことであって、そこから3年、5年をかけて土地に馴染み、お客さまから評価されていくのが宿泊施設だと思います。ですから、「立ち上げを経験して、その先の理想とか、その先のキャリアをどう考えているの?」と私は聞いてみたいのです。旅館がきちんとした評価を得て、ブランドに成長するまでには年単位の時間がかかります。そういう長いスパンで目標を共有できる人に仲間入りしてほしいです。
3年先のブランドを作っていく。その方法に100%の正解は無いと私は思っています。実際、「はなをり」の時も開業前に想定したとおりに物事が進んだことは多くはありません。常にお客さまのご要望を聴きながら、みんなで変化することで作り上げてきました。「佳ら久」はこれからその3年を過ごしていくことになりますので、それを一緒にやってくれる方を求めています。
【profile】藤井育郎(ふじい・なるお)
京都のすし店で修業後、1991年から京懐石の料亭で研鑽を積む。95年、新浦安オリエンタルホテル(現オリエンタルホテル東京ベイ)新規オープンスタッフとして入社、和食調理担当。2001年和食調理長就任。05年、カスタマー・サティスファクション部長兼和食調理長。06年、セールス部長兼務。宿泊部長を経て、2007年、副総支配人兼宿泊部長に就任。09年、なんばオリエンタルホテル総支配人。2017年よりオリックス不動産経営の箱根・芦ノ湖はなをりの総支配人。
箱根・強羅 佳ら久
施設概要(予定)
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300-8他
敷地面積:7,200.43㎡
延床面積:10,252.34㎡
棟数:4棟 地上3階地下2階が2棟、地上2階地下1階が1棟、地上4階地下1階が1棟
客室数:70室
設計:株式会社入江三宅設計事務所
施工:株式会社フジタ
着工:2017年6月
箱根・強羅 佳ら久

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