日本初上陸。「キャプション by Hyatt」とは？
総支配人に聞いてきた。
キャプション by Hyatt なんば 大阪 総支配人 福田慎太郎氏
取材・リクラボ 久保 亮吾 撮影・大崎 聡
2024年前半に開業予定の「キャプション by Hyatt なんば 大阪」。米国ホテルチェーン大手・ハイアットが展開する「キャプション by Hyatt」は2022年、米国のメンフィスで１号店が誕生した新しいブランドだ。このライフスタイルホテルブランドを大阪で手がけるのは、フジサンケイグループのグランビスタ ホテル＆リゾート。世界では３軒目、日本では初出店となる同ブランドについて、現在「キャプション by Hyatt なんば 大阪」の開業準備室長で、総支配人に就任予定の福田慎太郎氏に聞いた。
地元の人に愛されるTalk Shop
福田さんとは付き合いが長いので、総支配人になる福田さんにインタビューができて嬉しいです。ときに福田さん、おいくつになりました？（笑）
もう44歳になっちゃいましたよ〜。オッサンですね（笑）。
44歳で初めての総支配人職。いい感じじゃないですか。ていうか、見た目はもっとずっと貫禄あるけど（笑）。
さて、そんな44歳の福田さんが初めて指揮をとるホテルのブランドである「キャプション by Hyatt」について今日は教えてほしいわけです。正式名称には「なんば」っていう土地の名前が入るのですね。
はい。ホテルが立地する地元とそのコミュニティ―を大切にするというのがこのブランドの大きな特徴でして、「なんば」など地元の街の名前を入れることで、言わばホテル自体が地域と一体になって運営し、共生していくというホテルの在り方を表明している訳です。
宿泊者の方と地元の方がこのホテルの中でつながりを持ってほしい。そんな想いが強いブランドでして、だからこそいわゆるホテルのロビーは無くして、その代りに「トークショップ（Talk Shop）」と呼ばれる飲食を提供するソーシャルスペースがホテルの中心に据えられています。トークショップは宿泊の方だけではなく、地元の皆さんのためのスペースでもあるのです。
ハイアット・セントリックのブランドと、どんなところが違うのでしょう？
同じライフスタイルホテルでも「ハイアット セントリック」はほぼフルサービス型のホテルですが、キャプション by Hyattはセレクトサービス型、日本風に簡略化してお伝えすると宿泊特化型となりますが、キャプション by Hyattの場合は、ライフスタイルホテルの個性とセレクトサービスホテルの長所である柔軟で効率的なサービスの融合があると思います。
具体的に言うと、これまでの宿泊特化型ホテルはあまりゲストに関わらないタイプのホテルが多かったと思うのですが、キャプション by Hyattでは逆に積極的に関わっていきます。「今日はこんなイベントをホテル内でやりますよ」とか「今、この地域ではこんなものが流行ってますよ」など、地域を宣伝したりすることも私たちの役割と思っています。
そのためにもトークショップ（Talk Shop）が重要なんですね。
そうなんです。キャプション by Hyattが大事にしている言葉に「Not some basic hotel」というものがありまして、「普通のホテルではないですよ」ということを表現していきたい。ですから飲食を提供するトークショップには特徴を持たせています。
ここは地元の方がコーヒーを飲みながらパソコンを開いて仕事をしたり、気軽に入店しておしゃべりを楽しんだりすることができる開かれたカフェのような空間です。この空間で地元に関連したイベントもたくさん開催したいと思っています。例えば近くの黒門市場からショップの方に来ていただいて出店（でみせ）を開いていただいたり、お笑いなど芸能にもゆかりある土地ですから、そういったパフォーマーに来てもらうことも考えています。
福田さんはキャプション by Hyatt１号店であるメンフィスのホテルに行ったことのある数少ない日本人だと思うので、少し現地の雰囲気などを教えてもらえますか。
そうですね。2022年の秋に行ってきました。メンフィスはエルビス・プレスリーが育った音楽の街なので、トークショプでは地元のミュージシャンが来て演奏したりしていました。私が訪れた日にはヴァイオリンの生演奏にあわせてパフォーマーがフラワーアレンジメントをやっていて、とても盛り上がっていましたね。
トークショップの中でずっとＰＣとにらめっこしているビジネスマンもいて、現地のスタッフの方に聞いたら「あの人は毎日ここで仕事してます」と笑ってました。そして、昼時には地元の工事現場で働いている労働者っぽい人たちが入ってきてワイワイとランチをしていたり、夜になると仕事帰りのスーツ姿の人たちが軽くお酒を飲んでいたりするんです。私の想像していた以上に地元の人たちが利用する空間でした。決して宿泊の付帯施設としてF＆B（飲食）があるわけではなく、むしろ地元の方が気軽に使えるF＆Bがあって、そこに旅行者がまぎれこんで面白いコミュニティを作っていくという場所なのです。
キャプション by Hyatt を楽しめる人に働いてほしい
どんなメンバーを集めて、どんなホテルを作りたいですか？
「Not some basic hotel」であれと、ブランドのコンセプトが言っているのですから、普通ではないことを大いに楽しめる人に集まっていただきたいですね。先ほどのトークショップでやりたいことがあるならば、個人の趣味でもいいのでどんどん提案してほしいです。極端な話、若手のお笑い芸人の方にアルバイトで来ていただいて、トークショップを芸の披露場所で使ってもらってもいいと思います。
そして、このホテルで働く皆さんには、例えば「私、よくあそこのお店に飲みにいくんですけど、とっても美味しいですよ」とか、「今日はあそこでこんなイベントやってておもしろいですよ」などと、お客様に積極的に話しかけてほしいです。そういうリコメンドって、発言している本人がこの街やこのホテルを楽しめていないと全然伝わらない。だからキャプション by Hyattを楽しめる人こそ、ここで働いてほしいです。もし、このインタビューの原稿を見て、「日本初出店」とか「世界にまだ１つしかない」とか、そんなフレーズだけでなぜかちょっとワクワクした！ という方がいたら、めちゃくちゃ素質あるので、ぜひウチに来てほしいです（笑）。ホテル業経験は問いません！
現在のホテル業界は人手不足なので、チェックインマシンを置くなど、人によるサービスを簡素化する流れもあります。
私たちのホテルもセレクトサービス型ですから、もちろん手間をかけない機能も充実していて、お客様が直感的に動けるように設計されています。ただ単に業務の効率化をして終わりなのではなく、手間が省けた分でお客様と一生懸命にエンゲージしてほしいと私は思っています。
もちろん、話しかけてほしくないと思っているお客様には話しかけない。逆にスタッフと関わりたい方にはどんどん関わる。そういうセンスも大事です。セルフチェックインをされているお客様に「お手伝いしましょうか？」と声がけして、その時の反応で相手ととるべき距離感を理解できるような人に現場にいてほしいです。
お客様とエンゲージする。つまり仲良くなるっていうことなのですが、それがなければホテルはたんなる“箱”。ただの箱になってしまったら新しいものが選ばれるだけだと思うので、このエンゲージが重要なポイントだと私は思っています。
今回はじめての総支配人となる福田さんですが、ズバリ福田さんが作りたいチームとはどんなチームでしょう。
すごく簡単な言葉ですが、ハッピーなチームですね。ホテルの仕事ですからお客様のハッピーが重要なことはもちろんです。しかし、その前提として必要なのはスタッフのハッピーだと思うのです。ハッピーに働くためには実にさまざまな要素がからむと思っています。賃金も重要ですし、ワークライフバランスなど会社の仕組みも重要でしょう。ただ、基本的な人間関係としてお互いをリスペクトしている関係性があれば、互いに助け合うし、一体感のあるチームになると思っています。それを、しっかり作っていきたい。
自分自身、過去にはセールスマンだった時代が長いので「まわりのメンバーなど気にせず、一人でガンガン稼げばいい」と思うような時期もあったのですが、前職あたりからは組織全体を見るようになり、自分自身のことよりも周囲の人をプロデュースして、その相手が成功したりするほうが充実感を感じるようになってきました。良い仲間をどんどんプロデュースしていきたいですね。
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